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2018.06.06日文研の話題 [木曜セミナー・リポート]国境を越えてつながるマンガ文化の未来(2018年5月24日)

 5月24日、プロジェクト研究員であるアルバロ・ダビド・エルナンデス・エルナンデス氏を講師に、木曜セミナーが開催されました。

 題目は「大衆文化・メキシコプロジェクトの経験とトランスローカリティの模索」。日文研が重点的に取り組んでいる研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」(略称:大衆文化研究プロジェクト)の一環として、本年2月1日から4日間にわたってメキシコシティーで開催した大型イベント「イストリエタ、漫画と大衆文化:現代大衆文化から見たメキシコと日本」で得た成果や課題、今後の展望などを、最も中心となって活躍したスタッフの目から詳細に語りました。

 期間中は、いずれもメキシコを代表する国立図書館や大学など4つの会場を舞台に、「イストリエタ」(メキシコ独自のマンガ)と日本のまんが史を対比した展示会とシンポジウム、大衆文化と「震災」の問題を取り上げた国際集会、ワークショップを同時開催。現地のマスコミに大きく報道されたこともあり、多くの人々に足を運んでもらえたとか。そして、その成功の陰には、アルバロ氏が大学院生らと結成した「メキシコにおける日本サブカルチャー研究サークル」(CESJM)の協力が大きかったといいます。SNSで動画を配信したり、ネット経由で口コミを拡散し、それがマスコミの目に留まったりと、情報発信の良きヒントとして聴きました。

 今回の発表のキーワードである「トランスローカリティ」とは、アルバロ氏いわく、「国籍でマンガを考えることをやめようという意識」から生まれた言葉。国境を越えた大衆文化研究と社会をつなぐ新たなアプローチを模索した結果として、このイベントの中でもとくにワークショップ「絵巻物アニメをつくろう」は、とてもすてきな成功事例に思えました。昨年9月にメキシコシティーを襲った大地震を経験した子どもたちが震災前後の風景を共同で絵巻風に描き、そこに自分や家族、空想のキャラクターの絵を組み合わせたものを、日本の若手まんが家・石本悠馬氏がスクロール型のアニメーションに仕上げるというユニークな企画です。会場では、被災以来ずっと口を閉ざしていた子どもたちが、初めて家族や友だちの前で当時の記憶を語る場面もあったそうで、完成した作品は一見の価値あり。動画は国際交流基金メキシコ日本文化センターのfacebookで公開中です。
https://www.facebook.com/fjmex1/videos/1683091991714085/

(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)


国際交流基金メキシコ日本文化センター facebookより